昔むかしのお話。

日向の国のどこか。小さな集落(地区)に

ひょう助という青年と、おかめという別嬪さんとの夫婦が、

仲睦まじく暮らしておりました。

二人の間にはまだ子供がおらず、

子宝に恵まれるようにと毎朝、村のお稲荷様(天神様)へ

豆ん飯のおにぎりをお供えに持って、授かり祈願のお参りに

ふたり毎朝、足しげく通っておりました。

そんな二人の様子を、集落の若い衆や村人たちも、田畑の仕事や用事の折に見かけては

なんじゃろかい(なんだろうか)?

すこし気にしては口々に話しをしたりしておりました。

 

 

 

 

 

そんな、ある朝のこと。

 

 

 

いつものように、豆んにぎり飯をお供えに、ひょう助とおかめがお稲荷様へ

お参りにやってくると…

神主さんが朝から、境内の掃除やらお稲荷様のお世話をしておりました。

 

 

『おぉ、ひょう助におかめか。二人とも毎朝のお参り、ご苦労さんじゃねェ。』

「あァ、神主さん。うちにも早よぅ子がでくっといいとじゃけんどん(できると良いのだけれど)、

なかなかうまいこといかんもんじゃねぇ。のぉ、おかめよ。」

 

 

と、言葉を交わしながら。それではいつものようにと

「神主さん、今日もたのんます(頼みます)。」

『うむ、どれ。御務めをせにゃいかんね。』

と、二人は神主さんとのお祈りに臨むのでしたが…

 

…ゴクリ。

 

???

 

 

 

 

 

…実は神主さん、この朝の御務めからか、ずいぶん腹がへっておったようで。

ひょう助とおかめがお祈りのさなか、祝詞にあわせ、こうべを垂れております

その眼を盗んでつい、お供えに二人が持ってきた豆のにぎり飯を

あろうことか つまみ食い してしまいました。

 

 

 

そのバチ当たりの神主さんのことを

お社の中からじっ…と

怒りのまま睨みをきかせ 震えをおさえきれんばかりに見ていたのが何を隠そう

 

天神様お稲荷様でありました。

さぁ大変。

ひと~つ子、ふた~つ子と、祝詞を唱えながらこっそりと

ひと~つ、ふたつとたいらげては、

みっつ目のにぎり飯に手をかけたその時です。

 

 

 

 

さすがの天神お稲荷様も、遂についに我慢の限界、堪忍袋の緒が切れたとばかりに

神々しくも雄々しく透き通るように真っ白い毛並みの

狐へとその身をあらわしお社を跳び出し!

あッと驚く神主さんの目の真ん前へと、

睨みつけるような形相で、現れ出でて来られたのです。

これに驚いたのは、バチ当たりの神主さんだけではない事 言うまでもありません。

ひょう助とおかめ夫婦も、何が起きたのか分からないまま

突然、(お稲荷様と思われる)大きな白狐が跳び出し降り立った、あまりの驚きに腰を抜かし

あっけにとられ、一瞬の出来事であったその様子をただ見ているばかりです。

(このとき、村の若いおとこ衆が数人、おかめとひょう助の様子をのぞきに木陰にかくれておったのですが…。

声にもならんほどの驚きに、唖然と見ておったとか、おらんとか。)

 

 

 

と、お稲荷様の御目に

神主さんの傍らでお祈りに頭を垂れていたと思ったら、バチ当たりのとばっちりを被りまして

ワッとおどろいて後ずさり気味になったままの、ひょう助、おかめが留まります。  と?

 

お稲荷様に

 衝撃が走りました!

 

なんと天神狐さま、ひょう助の隣のおかめの別嬪さんぶり、その可愛らしさに

ひと目♡

 

それはもう、たいそう気に入ってしまいます。

 

そうとなるや否や、狐さま。眼つき表情うって変わって、なにやら面白おかしく愉快げな、躍りを…

キツネの前脚を、手招き(?)したり振ってみたり。後ろ脚まで、なんとも軽やかな脚はこび。

 

 

おかめはどう感じたやら、狐さまの、その踊り。

やがて【ついて参れ】とばかりに、おかめを連れ立って

神社の境内を踊り進みだした狐さま…

あれ。

っとひょう助!ハッと我に返ると大慌てで

 

狐とおかめをまてまて待ってくれー、引きとめようと追いかけて行きます、あらあら。

そうしますと神社の木陰から。

何じゃなんじゃ、こらでいじゃ(大変だ)、えらいことになっちきたもんじゃー

 止めんか、止めにゃァーと

かくれて様子を見ておった若い衆が(神主さんも巻き込み)、狐と二人のあとをまた追いかけて行き…

 

それはそれは、えらい騒ぎになったとか。

 

それから。

そんな大騒動が、どうおさまったやら。

程なくして、ひょう助とおかめの間には元気な赤子を授かり、

集落もそれぞれに落ち着きをとり戻して、みなそれからというもの

またいっそう幸せに暮らしたそうな。

 

めでたし。

 

※このお話は、おおもとになった口伝の物語をベースとして、先人達の守り継いできたひょっとこ踊りのイメージを損なわないよう配慮を重ねたうえでの表記がされております。

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